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前回の記事で 「ゲイシャ・カラテ・シンカンセン・アンド・ヘル」 「レイジ・アゲンスト・トーフ」 「モータル・ニンジャ・レジスター」 の3つを初心者向けオススメエピソードとして紹介しましたが、つい30分ほど前に完結したエピソード 「ナイト・エニグマティック・ナイト」 が実に秀逸というかこれって本編のプロローグ、本編主人公の前日談って言われてもまるで違和感ないんじゃね?ヤバクね?スゴクね?級のスゴイエピソードだったので(支離滅裂)、本エピソードをオススメエピソードの一番上に加えたいと思います。 入門用としてはやや戦闘描写が控えめですが、ニンジャスレイヤーの狂った世界観を実に微細に書いてくれているので、世界観(特にキョートの)を掴みたいニュービーなヘッズにはピッタリですぜ。 以下ネタバレ全開の解説 本エピソードは、アッパー・ガイオンシティのカチグミとして暮らす高校生「ナブナガ・レイジ」君がニンジャとして覚醒するまでを描いた話となる。 レイジ君がニンジャとなった際の名前は「シャドウウィーヴ」。 シャドウウィーヴといえばそう、「リキシャー・ディセント・アルゴリズム」で登場したザイバツシテンノの一人、ブラックドラゴンの弟子として出てきた、影を利用したカナシバリ・ジツを使う若きニンジャだ。 「リキシャー~」劇中ではシャドウウィーヴはニュービーとして描かれており、実戦の中でブラックドラゴンからレクチャーを受ける形で成長していた。 ブラックドラゴン=サンは基本的に真面目な人なので、常に弟子と行動を共にし、彼の成長に力を注いでいた事は想像に難くない。 にもかかわらず、「ナイト~」の3話目でブラックドラゴン=サンは何故か弟子を連れずに単独登場を果たした。 教育熱心で真面目な彼が、何故か弟子を伴っていない。 これに違和感を覚えた何人かの鋭いニンジャヘッズが 「これは過去の話で、まさかレイジ君は後のシャドウウィーヴ=サンなのではないか?」 という予想の声をあげたのだが、その時の俺は「ハハハ、面白い話だ。でも、まさかね。流石にないだろう」と一笑に伏してしまった。そんな馬鹿な。そんな安直で、そんな都合のいい話が…… しかし実際はまさにその通り!紆余曲折あり(ここは実際に読んで頂きたい)死の淵でニンジャソウルを手に入れたレイジ君は、新たなザイバツニンジャ「シャドウウィーヴ」として第二の生を歩み始めたのだ! しかも、本エピソードを実際に読んだ諸氏なら分かると思うが、これらは決して安直でも都合の良い話でもなかった。緊迫感溢れるストーリー展開。一難去ってまた一難どころか一難去ったと思ったら五難くらいになって返ってきました的な絶望的アトモスフィアが終始漂う。 そんな中でレイジ君は綱渡りのようにフラグを回収し、ギリギリのところでニンジャと成ったのだ。これを「都合が良い」と切り捨ててしまうのはあまりに無礼だろう。 これだけでも(敵役の過去エピソードという意味で)実に面白いのだが、それに至るまでのレイジ君の苦悩と葛藤が本エピソードでは存分に、存分すぎる程に、描かれている。これらをじっくり読んでいくと、本当に深い。 レイジ君の家庭環境は苛酷だ。 1年前に父親が過労死。母親は麻薬ジャンキーとなり、親戚の退役軍人は父親の残した遺産を利用して毎日のように酒を飲み、レイジ君に暴力をふるう。 このように、同居している大人2名はとんでもないロクデナシどもだ。 非凡な俳句のセンスを持つレイジ君に出来る事は世の中を呪ったダークかつハイレベルな俳句をしたためる事だけだったが、金とコネが全てのキョートではそのハイクも評価されず、金で順位を勝ち取った低俗なハイク詠みのクラスメイトだけがもてはやされる。センテンスが2つしかないというハイクですらない代物がランク1位を獲得し、レイジ君渾身の一作は見向きもされない。 それでもレイジ君はひたすら、授業中も、ハイクを自分のノートに刻んでいく。ホームルームにも参加しない。レイジ君はもはやクラスでは狂人扱いだ。 あげく、同学年のサイコ女、ペケロッパ・カルト所属のサイバーゴス少女・ヨモギさんからはストーカーチックな告白を受け、ついには「ドクターハイク」と名乗る怪しげな男の詐欺行為にも引っ掛かってしまう…… レイジ君の置かれている環境は本当に苛酷だ。 ゴミ溜めのネズミもかくやという生活を送る中で、レイジ君は「世の中は狂っている」と確信する。誰も信用できず、誰も尊敬できない。 そしてとうとう、ビルの5F相当の高さからレイジ君は転落する。 狂った世の中から死をもって解放される……はずだった。 しかし彼に死は訪れず、代わりに訪れたのはニンジャソウルだった。 彼はニンジャとなったのだ。 そこでブラックドラゴン=サンの登場だ。 ニンジャになっても所詮は一人。誰からの協力も得られない。力を持て余し、徐々に追い詰められるレイジ君改めシャドウウィーヴ。 そんな彼に対し、ブラックドラゴンさんは的確なアドバイスを送る。師匠キャラの面目躍如だ。 そして窮地を脱したシャドウウィーヴさんに、ブラックドラゴンさんはこう述べるのだ。 「ザイバツに来るか?世界の真の姿を見せてやる」 己の命の恩人、頼れる師、狂った世界からの解放。 これらを一度に得たレイジ君は、ブラックドラゴン=サンについていき……本エピソードが終了する。 本エピソードの中で、こんなやりとりが出てくる。 ブッダがある男をジゴクから助け出すため、切れやすい蜘蛛の糸を垂らした。ナンデ?」蛍光ブッダヘアーの2人は難解なスカム禅問答を繰り返す。「ゲイのサディストだから」「正解です」 そう、レイジ君はまさしく 「ゲイのサディストが垂らした糸に必死に縋」り、 文字通りの地獄から抜け出したのだ! 正確に言うと、糸は何本も垂らされていた。 これまで通り勉学に励んでカチグミになるコースや、ヨモギ=サンとお付き合いしてペケロッパ・カルトに入信するコースなど。あるいは、ネオサイタマに駆け落ちしてハイク詠みとして大成するコースもあったかもしれない。 果たしてどれが幸せだったのか、今となっては分からない。 ただ、彼は無数に垂れさがる糸の中から「ニンジャになる」という糸を掴み取ったのだ。 重要なのは、これが過去の話だと言う事だろう。 先に述べた通り、ブラックドラゴン=サンとシャドウウィーヴ=サンは「リキシャー~」で登場している。そして、悲しい事だが、ブラックドラゴンさんはリキシャー~内で死亡しているのだ!他ならぬニンジャスレイヤーの手にかかって! 自分を救いだしてくれた頼れる師匠は 『シャドウウィーヴ!シャドウウィーヴ!援護を!援護してくれ!…………サヨナラ!』 というIRCメッセージを残し、死亡する。 このメッセージを読み、師匠の死を知ったシャドウウィーヴは深く悲しみ、怒り、ニンジャスレイヤーへの復讐に燃える。 主人公であるニンジャスレイヤーに対してこうも強く復讐の念を抱いているキャラクターはいない。ただひとり、シャドウウィーヴを除いては。 そもそもサツバツとしたマッポーの世を描いた忍殺世界では、師を失って嘆き悲しむニンジャという存在自体がかなりレアだ。 ゆえに、「リキシャー~」を読んだ当初は 「師匠が死んだくらいで大げさでは?」 と思ってしまったのだが、いや、本エピソードを鑑みれば当然だった。 シャドウウィーヴにとってブラックドラゴンは師匠以上の存在、いや、ニンジャになった後を第二の人生と考えれば、文字通り彼は「父」と呼んでもいいほどの存在だったのだ。 それを殺したニンジャスレイヤー。師匠を殺したニンジャスレイヤー。 絶対に許せぬ!マスターの仇をとる!となるのも無理からぬ話であろう。 とにかく、こういった暗い背景・暗い未来が事前に提示されているからこそ、本エピソードはいっそう輝いて見えるのだろうと思う。 ……師匠を失ったシャドウウィーヴのその後は描かれていない。ただ「シテンノの1人、パープルタコの弟子となった」という簡単な説明があるのみだ。 しかしそのうち、必ず、彼のその後が描かれる時が来るのだろう。 その時、師匠の仇であるニンジャスレイヤーとどのようなやり取りをし、どのように決着をつけるのか。 結末を読むのが少しだけ怖い気もするが、実に楽しみだ。
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